Act3.アイドルのカノジョになりました

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 ペンの先であごをとんとんしながら考えていると、強い秋風が窓からテーブルに舞こんでくる。  ひゅるるるる。  窓からふきこんだ一枚の真っ赤な紅葉が、くるくる踊るように舞ってルーズリーフの上に着地した。  きれいな落ち葉だ。りんごみたいに真っ赤。  そういえば今年まだ食べてないな。旬のりんご。  赤いフルーツといえば、冬になればみずみずしいいちごもでてくるし。  ケーキに乗ったラズベリーなんてのもいいよねぇ。  ……いかんいかん。なんについて考えてたんだっけ。  手から離れた風船に向かったジャンプするように、激しく逸れていく思考を必死で取り戻す。  そのとき、アイディアに手がとどいた。  フルーツティー。  うん! 二人がデートで飲むのは、ホットフルーツティー! これだ!  そして、ペンを握った瞬間、ルーズリーフがひらりと手元から離れた。  ぺらりとその身をくねらせたかと思うと、ルーズリーフさんは魔女の見習いの少女のごとく秋風に乗り、窓の外へと旅立ってしまった。  うーんなんか風流。キャラクターたちが街に旅立つシーンなんて書かれたら、そりゃ紙も旅したくなるよね。ひらひらり。最初の目的地は、図書館の中庭ですか。いい旅を、ルーズリーフさん。  って。  のぉぉぉっ!  心の中で悲鳴を上げて、頭を両手で挟み込む動作をしたあと、席から立ち上がり、あたしは図書館の階段を駆け下りた。
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