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「いいもーん。そしたら花乃におぶってもらうから。藤波くんにおんぶしてもらってるって想像しながら」
なんてことだ。
人を馬代わりにするならせめてその人のことをそのあいだじゅう頭に思い浮かべてすまなそうな顔するくらい礼儀じゃないのか。
対するあたしは馬代わりにされただけあって、走れるしジャンプもできるスニーカー。ジーパンにセーターというシンプルな服装だ。あったかいの大事。
タートルネックの着心地のよさを噛み締めていると、ニューシングルの広告にプリントされている『エクレール』5人のメンバーをしげしげと眺める。
一番端っこで腕を組んで、にやりと笑ってこっちを見つめているのが、一路純だ。
で、その隣で首元のマフラーに手をあてて微笑んでいるのが、夏陽の推し、藤波正真くん。
それから、えっと。
「夏陽」
「なに?」
「こっちの右のお三方は、なんて名前だっけ?」
「はぁ!? 花乃ってばまだ覚えてないの? しょうがないなぁ」
それから開演まで、夏陽によるファンクラブ会員なみに詳細な『エクレール』のメンバー紹介をあたしは延々聞いていた。
あるとき、急に会場のライトが消えて、なんともいえない緊張感が会場全体を包みこむ。
舞台の幕に、五つの影が映り込んだとたん、会場から歓声が上がった。
直後、アカペラのコーラスが響きわたる。
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