Act6.セクシーダンスにテンパります

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 十字のネックレス。紫のパーカーに黒いパンツ。  サングラスの上の片方の眉が上がった。 「んだよ、オレは怪獣か?」  希少さと存在感においては、近いものがあると思いつつ、文庫本をポシェットにしまう。 「あの。今日は、よろしくお願いします」  お辞儀をすると、純はぷっと噴出した。 「もしかしてすげー緊張してる?」  一人で勝手に笑うと、一人で勝手にあ、と、すまなそうな目をして、 「……初めてだったのか」  ささやくようにそう訊いてくる。  当たり前でしょ。どこからどう見ても平凡で地味な中二女子にそんな経験あると思うのか。  そう返そうとするのに、耳たぶにかかる息が気になって言葉がでてこない。 「そりゃ、悪いことしたな。でもその代わり――ぜったい満足させるから」  首筋から力が抜けていくような、このみょうな感じ――いちいちなんなんだ。 「い、いいよ別に。あたしは小説のため、そっちは告白避けのためのつきあいなんだから」  ぶんぶん顔の前で両手を振る。振り続ける。 「ほんと、ただそれだけなんだから――」  両手を顔の前でふるあたしを何人かの道ゆく人々が振り返った。 「本気とかぜんぜんいらないから――」  自分の両手の勢いにあまって、数歩よろけた肩を、支えられた。  なに。何が起きた。まさか。  肩を支えられているのか。
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