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と思わずいらんことまで言ってしまうと、
「ふん。まぁ本の中だからな」
純は軽く受け流し、そして――反撃に出た。
「けどヒロインの一人のルウナだってなかなかだったぜ。いちばんの幸せはあなただって、彼氏の胸に飛び込んでく。現実にいる女子もこれだけ素直だったらな。ちょっと肩に触れられただけで不潔とかわめかれたんじゃたまんねーよ」
まだ根に持ってたのか。
「ごめんごめん。でも、それは本のヒロインだから」
一瞬空いた間に、見つめあう。おたがいのおどけた顔がおかしくて、同時にぷぷっと噴出した。
笑いも収まらないうちに目に入って来たのは、となりの新刊の棚のある一冊だ。
「あ、あったあった! 今日のお目当て。琴宮麗音先生の新刊!」
カラフルなイラストが描かれたその本を手にとったとき――ふいに純の笑いがやんだ。
「琴宮先生って、正体不明なんだよ。男の人か女の人か、おじいさんなのかおねえさんなのかもわからないんだ」
いわゆる覆面作家ってやつですな。
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