1F原発復旧3号機カバー酔夢譚

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【47】松阪さんの終の住処 【48】いつものことだから安全です? 【49】ちょび髭のオイちゃんの終の棲家 【50】クレバス プロローグ 大地震後の大津波が襲ったその時、機械保守担当川中真一は建屋の外でまさかそんなことになっているとは思わずに建屋内のタービンを点検していた。  タービン建屋は原子炉建屋の隣で海抜約10mにある。通称「10m盤」と呼ばれているが、津波の際は徒歩で30m盤と呼ばれている通称「高台」まで歩いて逃げることになっている。 機械保守のグループ長は地震後すぐに高台の免震棟内に退避していたが、津波と言っても通常の数mくらいとしか考えていなかった。だから誰も速やかに退避の指令を真一に出していなかった。  真一は10m盤のタービン建屋内点検中に、突然屋外から押し寄せる圧倒的な海水の流転の渦の中で意識を失い、複雑な機械空間の中で機器に叩きつけられ、最初の一撃によって水中で息を引き取った。
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