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「やっほー、遅かったね。とっくに僕は25小節目のソロフレーズは吹けるようになったよ」
AM8時30分。
朝の光に照らされた彼はいつも通り、余裕な笑みを浮かべていた。
「え、早くない?てか今日朝練あったっけ」
「親愛なる先輩とともに昨日、先生に許可を貰いに行ったんだよ。ソロコンテストも近いしね、先にコンクールの曲は仕上げたいと思って」
「うっわ…フルートはいくらでも楽器持って帰れるくせに…」
「はははっ、今回の曲はパーカッションは使う楽器が豪華だもんね」
私のとなりの席、「魁水頼(サキガケミライ)」は私の同級生だ。
出席番号が近く、志望の部活も同じだったため、仲良くなるのにそんなに時間はかからなかった。
ただ、私が彼に苦手意識を持つのには理由がある。
「…ほんと、部活の話をする桜咲さんは綺麗な眼をしてるね。今にでも食べちゃいたいくらい」
「……」
スクエアメガネの奥の瞳が、一瞬だけ血のように赤く染まる。
そう、彼は「呪鬼」なのだ。
「陰陽師」である私達の、宿敵の。
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