となりのさきがけくん

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時は数ヶ月前、私とお兄ちゃんが入学してしばらく経った頃まで遡る。 ☯ 「さきくん、来週に定期演奏会の曲目決めるから何やりたいか考えてだってさ」 時は7月末。コンクールを終え、夏休みを間近に控えた私達は、部活の定期演奏会について話し合っていた。 「あぁ、そういえばあったねそんなの。桜咲さんは何やりたい?」 「えー、まず王道の宝島でしょ、あと、コンクールでやった2曲もやるみたいだし~…あ、家族と友達も観に来るんだしJ-POPとかいいかも」 「ふむ、最近流行ってるならあれじゃない?【腰の子】」 「あー、マッサージ師が腰痛持ちのモデルの子どもに転生するやつね」 「そうそう、あれのオープニングの「アイドク」」 「腰痛の原因に書かれた本を愛読してる主人公に気持ちを表してるんだっけ」 「うん、あの曲すげえ好き」 「わかる」 しかし私達にはオタクトークをしている暇などない。吹奏楽部は忙しいのだ。 「んー、ならやっぱアニソンとかいいよね。お兄ちゃんも見に来るし」 「………へぇ、舞桜くんも来るんだ」 「うん、私の影響でお兄ちゃん、吹奏楽好きだからさ」 「ふーん…」 (入場料は無料って言ってたから、小学生とかも見に来れるんだっけ) なら、大勢の年齢層に楽しめる曲がいいな、なんて考えていたその時だった。 「…ねぇ桜咲さん」 考え込んでいる私に、珍しく彼の方から話しかけてきた。 「どうしたの?」 「あのさ、放課後に体育館の裏に来てくれないかな」 ――体育館の裏?不良の喧嘩しか浮かんでこないのは、私だけだろうか。 (危ない雰囲気…お兄ちゃんに相談する?) 「あ、舞桜くんは呼ばないで」 彼はそう言った。 「舞花さんだけ、来て」 「…わかっ、た…」 珍しく真剣な彼の瞳に、頷くしかなかった。
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