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文芸部員の同級生たちは皆思い思いに読書していた。
「『罪と罰』を読んだの?」加藤は聞いてきた。
「まだ途中」僕は読んでいた本から視線をそらした。
「文芸部は楽じゃないな」
「向き不向きというか読んだ作品が合っていればうまくいくのじゃないの」
「自分で書くとなると違うような気はする」
「読書すればいいよ」
「古典は必須かな?」
「読んだ方がいいよ、絶対」
「新作も読まないと」
「それも言えるけど」
「オレはでくのぼう、と呼ばれて笑ってるような存在になりたいな」
「宮沢賢治か」
「そうだ」
「アメニモマケズか?」
「当たりだ」
「あの方の作品にどんぐりが主張し合っているから何とかしてくれと言われて山に行き喧嘩の仲裁をした物語があったな」
「思い出した」
「いいね」
「部活動はいいことだ」
「永田は文芸部の部長になるの?」
「よくわからん」
「文学賞に応募するの?」
「したいな」
「君は文才があるからうまくいくよ」
「ありがとう」
図書室の本が置いてあるテーブルの上でコーヒーを飲む部員はいるのだな、と僕は少し驚いたのだ。
「図書室は快適だな」僕は言って女子の持ってきた、ビスケットを食べた。
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