寒中水泳

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「他の生徒たちは関係ないから」教師は余裕がある口調で言った。 「他って?」 「寒中水泳をするのは君たちだけだよ」 「どうして?」中山は言った。 「ペナルティーだよ」教師は笑った。 「何のためですか?」 「君たちはテストの成績が悪かったからです」 「どうして?」中山はふんどしを巻きなおした。 「知るか」 「差別ですよ、訴えてやる」 「死んだら本人は訴えられるかな? 死人は訴えることはできないな」 「どういうことを言っているのですか?」 「相方の方は無駄なこと言わないで、すでに水につかりはじめているよ」 「冷たい」僕はすぐに海水からはなれた。 「どうした?」 「冷たいです、死にます」 「自分が悪いのだろ」 「どうしてですか?」僕はたずねた。 「君たちは気に食わないから」教師は答えた。 「気に食わないと寒中水泳をさせるのですか?」 「そうだ」 「むちゃくちゃだな」 「そうでもない」 「寒中水泳はいいのかもしれないが僕には合っていないと思う」 「そんなの自分で決めるな」 「自分のことはわかります」 「まあいいか」 「いいのですか?」 「寒中水泳しなくていいよ」 「ありがとうございます」僕は礼を言った。すぐに体をバスタオルで拭いて制服を着た。中山も服を着た。 「学校に戻るぞ」教師は言って僕と中山に車に乗るように促した。  僕は教師の運転する自動車に乗って暖房が作動しているのに体を震えさせていた。僕はふるえる。 「永田、大丈夫か?」 「だめかも」 「何?」 「はあ」 「それじゃ病院に行くか?」 「はい行きたいです」 「行きたいのか?」  僕は自分のことなのに「逝きたいです」と言ったような気がした。 「早まるな」教師は言った。 「何とか生きています」僕は寒くて体はふるえる。
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