13.サワメの本当の名前。

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「そう。じゃあ、もう分かっちゃったかな?」  サワメが、泣きそうな顔で微笑んだ。 「私の、こと」 「ちょっと待って、どういうことだよ?」  俺は思わず聞き返した。何がなんだか、分からない。サワメが今日遅れてきたこと、俺がミニチュア井戸を見つけたこと、鳥居の額縁を見つけたこと――それで、サワメのことが分かる?  俺が戸惑っていると、サワメはまた笑った。 「太地くん、やっぱり古典苦手でしょ」  脳裏を掠める古典のナカセンの顔。 「……苦手、だけど」 「じゃあきっと、古事記とか日本書紀とかも触れたこと無いよね」 「お恥ずかしながら」 「……もう、バカ」  サワメはそう言いながらも、まだ笑っていた。 「じゃあ、おバカな太地くんに――ちゃんと、言わなきゃいけないこと言うね」 「サワメにおバカとか言われるとムカつくな」  「ちょっと! 私が今から話そうとしてるんだから、口挟まないで! ……あのね」  サワメは、言葉を選びながら。 「私、今日でお別れなんだ」    ――え? 「私の()()()はもう今日で終わりなの。だから、太地くんにお別れを言いに来た」 「……え?」  やっとのことで、声を絞り出す。今サワメは、何を言っているのだろう。今日でお別れ? だってそんなこと、サワメは今までに一度も――。 「急にこんなこと言って、ごめんね。でも、そう()()()()()()()。だからもう一緒には居られないんだ、太地くんとは」 「……どういうこと、だよ」
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