13.サワメの本当の名前。

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 急展開に、頭が追いつかない。心も追いつけない。サワメの言っていることがうまく呑み込めなかった。 「あのね、太地くんには私の本当の名前、教えてあげる」  サワメは人差し指をかざして、虚空に文字を書いた。 「『泣』『沢』『女』だよ。私、泣沢女(ナキサワメ)って言うんだ」 「ナキサワメ……?」 「うん。たまに泣沢女神(なきさわめのかみ)って呼ばれるよ」 「……え? カミ……って」  聞き返しながら、俺は例の石板の文字に目をやった。――泣沢女社。なきさわめのやしろ。 「じゃあ、サワメ……これは」  震える手で、その文字を指し示す。 「これはどういうことなんだよ……サワメのお社って……」  言葉が、続かない。涙も出てこない。ただ、俺は震えていた。震えが止まらなかった。  なんで。  サワメが「ナキサワメ」なのなら。  この文字列を、そのままの意味で取って読む。    サワメのお社。  つまりサワメは、 「か、み、さ、ま――――?」  たどたどしく、その言葉を口にした俺に、サワメは泣き笑いの顔で頷いた。 「ずっと黙っていてごめん。  太地くん、私、人間じゃないの。  ……神様、なんだ」
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