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14.謝らないでよ。
「神、様……」
その瞬間俺は、バラバラだったパズルが組み立てられていくような感覚に襲われた。
サワメが人間じゃなくて、神様だった。
その事実は、本当にジグソーパズルの最後のひとピースで。俺の脳内を駆け巡るサワメとの日々の記憶の断片を、ひとつひとつ繋いでいく。
「んーっとね、あ、ほら。キミの高校を出て左に曲がったところに小さな竹林があってさ、そこにお社があるじゃん? そのあたりからキミの隣を歩いていたの!」
初めて会ったとき、お社から俺の隣を歩いていたったいうのも。
「ずっと待ってたよ……! 太地くん、またお昼にねって言ったのに、もう半刻も過ぎてるよ!?」
半刻、なんていう昔の時間の単位を普通に使っていたのも。
「貸出カード、持ってきてる?」
「……私、持ってない……」
一緒に図書館に行ったとき、貸出カードを持っていなかったのも、なんだか挙動不審だったのも。
「一枚二枚三枚……あ、十枚ありました」
本屋に向かったときの支払いが、小銭ばかりだったのも。――サワメの持ってくるお金は、「お賽銭」だったからだ。遊園地のチケットを買うときもそうだった。何故か五円玉や五十円が多かった。
「おい、サワメ。本屋はエスカレーターあがらないと無いぞ」
「えすかれーたー?」
「何バカみたいな顔してんだ。ほら、エスカレーターこっちだってよ」
エスカレーターやタピオカを見たことがなかったのも。
馬車を物珍しそうにしたのも、何故か牛車には乗ったことがあるといったような、古代人ですか?というボケだと思った言動も。
全部、説明がつくんじゃないだろうか。
サワメが、神様だったから。
人間じゃ、なかったから。
令和の人間の生活を知らなかったから。
だからだ、って。
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