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「サワメの名前は、泣沢女神の『サワメ』だったんだな」
乾いた呟きが、俺の口からこぼれ落ちる。サワメは、ナキサワメ。人間じゃなくて、だからJKなんかでもなくて――神様。
「そうだよ」
サワメの美しい瞳から、涙が一粒流れ落ちた。
「ほんとは、もっと早くに言わなきゃって、ずっと思ってたんだ。太地くんが、このお社を調べるって言い始めたときに言うべきだったのかもしれない」
だけどね、とサワメが続ける。
「私……太地くんと過ごすのがすんごい楽しくて。もっと一緒に居たいなって、ワガママ考えちゃってさ」
この関係性のまま、ずっと。
神様だって、知らせないで。
人間と泣沢女神じゃなくて。
太地くんと、サワメのまま。
「だから太地くんをお社に連れてくる前に、鳥居の額縁も取ったんだよ。そしたら痕が残っちゃったから、鳥居を塗り直したの。……でも痕も消えなかったし、逆に変に新しく見えちゃって」
そうだったのか。
すべての疑問が解ける。
鳥居はサワメが全部やったのか。俺が最初にこの神社について尋ねたとき、彼女はニコニコと笑っていたっけ。
「サワメが……最近見つけた、秘密基地。神社の名前わからなかったから、単に『お社』って呼んでいるんだけど……」
最近見つけた、の前に少し言い淀んでいたのはそれが嘘だったから。そして、鳥居についてもサワメは嘘をついていた――。
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