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「太地くん!」
サワメが叫んだ。
「まだまだありがとうって言いたいこと、たくさんあるよ! お社を素敵な場所って言ってくれてありがとう! 図書館に連れて行ってくれてありがとう! 一緒に買い物に行けて楽しかったし、トランプランドも、本当にすごく、すっっごく、楽しかった!」
他にも、たくさんの思い出がある。
サワメが勝手に俺の部活を見に来たこと。
一緒にタピオカを飲みに行ったこと。
お社で他愛のない話をしたこと。
夏休みは、長いようで短かった。
サワメと過ごした日々も、数え切れないというほどの日数ではないはずだ。
――それでも、俺にとっては。
「俺も、楽しかった!」
――サワメと一緒に居る時間は、充実していて。
「こんなに終わってほしくないって思った夏休みは、初めてだったんだよ!」
――ずっと一緒に居たせいで、サワメとは長い付き合いのような心地がしているんだ。
「俺だってまだまだまだまだ、サワメと一緒に居たいんだよ! この夏休みだけだなんて、嫌だよ! 今日でお別れだなんて、あんまりだよ!」
――こんなにも。
人を大切に想ったことはなかった。
もっと一緒に居たい、だなんて。
共に過ごす時間が終わってほしくない、なんて。
そんな、他者への気持ちが、
こんなにも自分の心を侵すなんて。
前の俺だったら、想像もしなかったはずだ。
「サワメ」
その名前を、口にする。
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