15.お別れのとき。

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「太地くん!」  サワメが叫んだ。 「まだまだありがとうって言いたいこと、たくさんあるよ! お社を素敵な場所って言ってくれてありがとう! 図書館に連れて行ってくれてありがとう! 一緒に買い物に行けて楽しかったし、トランプランドも、本当にすごく、すっっごく、楽しかった!」  他にも、たくさんの思い出がある。  サワメが勝手に俺の部活を見に来たこと。  一緒にタピオカを飲みに行ったこと。  お社で他愛のない話をしたこと。    夏休みは、長いようで短かった。  サワメと過ごした日々も、数え切れないというほどの日数ではないはずだ。  ――それでも、俺にとっては。 「俺も、楽しかった!」  ――サワメと一緒に居る時間は、充実していて。 「こんなに終わってほしくないって思った夏休みは、初めてだったんだよ!」  ――ずっと一緒に居たせいで、サワメとは長い付き合いのような心地がしているんだ。 「俺だってまだまだまだまだ、サワメと一緒に居たいんだよ! この夏休みだけだなんて、嫌だよ! 今日でお別れだなんて、あんまりだよ!」  ――こんなにも。  人を大切に想ったことはなかった。  もっと一緒に居たい、だなんて。  共に過ごす時間が終わってほしくない、なんて。  そんな、他者への気持ちが、  こんなにも自分の心を侵すなんて。  前の俺だったら、想像もしなかったはずだ。 「サワメ」  その名前を、口にする。
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