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16.会いに行くよ。
サワメが居なくなってから一週間。夏休みは終わり、二学期が始まった。学期の最初は短縮日課から始まったが、もうじきいつもの時間割に戻る。登校して、五十分の授業を六コマやって、部活をやって、帰宅。何の変哲もない高校生活。夏休み前の俺の日常。
ただ、いつも通りに戻るだけなのに。
――どうしてこんなに俺は。
「たーいーちー?」
昼休み、机に頬をくっつけて寝かけていた俺の顔を、覗き込む者が居た。メガネのレンズ越しに、彼の視線が俺を刺す。
「どーしたの、そんなに物足りなさそーな顔して」
目の前は、ニヤニヤと笑う崎崖哀翔が居る。
「哀翔、うるせぇ」
「ふうん、僕の『物足りなさそうな顔』っていう表現は否定しないんだ」
「ふん」
「どーしたの、何がそんなに物足りないの?」
――サワメが、居ないから。
そう言いかけて、やめる。あいつは神様だから……神様が人間に化けていたなんてこと、誰も信じないだろうし。何より俺があまり言いたくなかった。
「ん、いや、特に何も」
「ふーん、逆に怪しい」
哀翔が俺の頭をツンツンとつつく。次の瞬間、俺は無意識のうちに尋ねていた。
「なぁ、哀翔はさ……もし、ずっと一緒に居たいって思った人が、突然目の前から消えたらどうする?」
「えっ」
俺からそんな真面目な質問が返ってくると思っていなかったのだろう。哀翔が目をパチクリさせる。
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