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「んーっと、消えるっていうのは、その人が引っ越すとか消息不明になっちゃうとか、そういう感じでオッケー?」
「まあ、うん」
「そうだなぁ」
哀翔はしばし考える素振りを見せてから、こう言った。
「どこに居るか分かってるなら、会いに行く」
「……そうか」
どこに居るか、か……。
あの日、俺の目の前で消えていったアイツを思い出す。サワメ、本当の名前は、泣沢女神。神様の世界に帰っていったアイツの居場所なんて、やはりもう分からないのではないか。
いや、待てよ。
俺はその瞬間、気づいた。
サワメは、泣沢女神。つまり、神様。神様の世界なんて知らんが、俺たち人間がその神々を祀るために作った、人間世界の天上世界を繋ぐ場所なら、あるではないか。
「……神社」
思わず呟くと、哀翔が怪訝な顔をした。
「神社?」
「なぁ、哀翔。神社って、どの神様を祀ってるーとか決まってるよな?」
「え? あ、うん」
突然の俺の質問に、慌てたように頷く哀翔。俺はそれを見て、スマホを取り出した。検索エンジンを開き、キーボードを呼び出す。
『泣沢女神 神社』
検索結果の一番上に出てきた神社を調べる。
『畝尾都多本神社(奈良県橿原市)』
「ここが……」
俺がそのページを暫く見つめていると、横からまたつつかれた。哀翔だ。声を潜めて、口元に笑みをたたえながら、彼は意地悪く聞いてくる。
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