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「で? 太地? その君の『ずっと一緒に居たいって思った人』はどこにいるんだい?」
スマホを握りしめて答える。
「……奈良、だった」
俺の答えに対して返ってきたのは。
「遠距離恋愛だねぇ」
「だな、宗田ってばいつの間にそんなハードルの高い恋をしてるんだ」
「青春だな」
「そんなんじゃねーし!」
言い返しながら気づく――今の、明らかに哀翔の声だけではなかった。後ろに気配を感じる。その声の主たちに思い当たり、俺はハッと振り向く。
「お前ら! いつの間に!」
振り向いた俺の目に映ったのは、二人のクラスメイト。サッカー部所属の、亀広と柿田の姿。
ポンポンと亀広が俺の肩を叩く。
「話は聞かせてもらいましたよ? 宗田太地クン?」
柿田もニコニコとしながら俺の頭を撫でる。
「そういえば宗田、俺らの修学旅行の行き先、近畿だったよなぁ」
哀翔も俺の目を覗き込んで笑った。
「修学旅行、前にこのメンバーで班組もうって話してたよね?」
つまり、近畿方面ということで神戸や大阪を巡る奴らが多い中、俺らは奈良へ行こうと。しかも大仏とかな有名どころじゃなくて、マイナーで、どんなところかも分からない神社に。
「でも……俺の都合でみんなの希望が」
通らないと、みんなは楽しくないんじゃないの?
そう言いかけた瞬間、俺の顔の目の前で柿田がパンッと手を打った。
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