プリムラ

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ちとせはその写真を手に取り、しばらく眺める。 思えばずっと、見ていたかったのだ。 その時、スマホが震えた。 画面を開くと八尋の名前が大きく表示されている。電話なんて珍しい。 ちとせは隠し事がバレたような気分になり、今日撮ったばかりの新しい写真も一緒に慌ててノートに挟む。 「どしたの」 『あ、ちとせって黄色と水色どっちが好き?』 何を急に。 第一声がその言葉で、ちとせは戸惑う。 「黄色かな」 ひとまず答えてからなんの話かと聞こうとするも、『わかった』と言った八尋はすぐに電話を切ってしまった。 いつまで経っても八尋がなにを考えているのかわからない。 ちとせはもう一度写真を手に取り、呆れて笑った。 次の日に、黄色のフォトフレームをプレゼントされるなんて、知らなかったから。 end
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