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「悪い、遅れた」
数日経ち、演劇チームの顔合わせの日となった。放課後の空き教室で八尋は柚希の隣に座る。
「今ね、あの先輩がロミオに決まったところ」
柚希が目線をやった先には翔がいた。
八尋はやっぱり、と小さく口にする。柚希は「さすがの人気だね」と翔を眺めている。
「今はジュリエット決めてる途中?佐藤さんやれば?」
当然自分は役者にはならないと決め込んでいる様子の柚希はぶんぶんと首を振った。
そうこうしているうちにジュリエットは一年の小柄な女子に決定してしまう。
「私達は大人しく裏方やってよう」
そう笑う柚希。そういえばどうしてこの子はあの時演劇に参加すると立候補してくれたのだろうか。
「佐藤さんってさ」
それを尋ねようと口を開いたちょうどその時、
「ティボルト役は野沢八尋先輩がいいと思います!」
どこからか発せられる自分の名前と信じられない推薦に動揺し、八尋は小さく「え?」と呟いた。そもそも八尋はティボルトがどういう人物なのかすらわかっていない。
「野沢くん、あの子知り合い?」
柚希にそう聞かれ声の主をよく見ると部活の後輩の女子であることに気が付く。ジュリエット役に選ばれた久城玲奈という人物も同様に部活の後輩で、彼女の方とは何度も会話をした覚えがあった。
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