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「俺達、コミュニケーション不足らしいじゃん」
「え?うーん、八尋はそう思うの?」
後夜祭はグラウンドと体育館の二箇所で行われる。八尋とちとせはバンド演奏で騒がしい体育館ではなく、幾らか静かなグラウンドで手持ち花火の束を手に取った。
生徒会が用意した着火ライターと小さなバケツも受け取り、乾いた土の上を歩きながら、八尋は会話を続ける。
「まあ、今日一日ちょっと気になってることがありまして。それを聞くか悩んでたんだけど、あーそっか、こういうのをちゃんと聞いとくべきなんだなって……」
「なに?じゃあはやく聞けよ、回りくどいな」
「いや、ちとせくん、今日様子おかしくないすか?署名活動頑張ったり女の子と話したり」
ちとせはきっと俺の自由だろ、と言うのだろうけれど、それでも行動原理を掴みたいと思ってしまうのだ。これじゃあまた叱られてしまうだろうか。
そわそわと落ち着かない八尋に対し、ちとせは顔色ひとつも変えずに「うーん」と声を漏らしながらしゃがみ込み、八尋の持つ花火を一本手に取り火をつけた。
シューと大きな音を立てて緑やピンクに色を変える火花が、黙ったままのちとせの顔をカラフルに照らす。
八尋はそれが羨ましくなって、ちとせの物より少し大きな花火の先端に火をつけた。
「俺、昨日、聞いてたんだ」
ちとせの不意の言葉に顔を上げると、目が合う。
「ジュリエットに告白されてただろ」
八尋の心臓がドクンと大袈裟に跳ね、言葉を失った。
「偶然、聞いちゃってさ」
ちとせは燃え尽きた花火をバケツに放った。
ツンとした、火薬の匂いがする。
「あの子の前ではっきり俺のこと好きって言ってくれて、嬉しかった。けど、本当は久城さんとか佐藤さんとか、ああいう子達と並ぶ八尋の方が、なんかしっくりくるから、俺はそういうの全部奪ったんだって思うと、すげー悪いことした気分になってさ」
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