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「え、俺めちゃくちゃ悪役に推薦されてない?」
教えてくれた柚希は勢い良く何度も頷いた。
「しかも結構大事なキャラだよ」
柚希は心配そうに告げる。
八尋は自分がやるべきではないと思ったが、それと裏腹に悠太の方は「まあ別にやってもいいか〜」と呑気に同じクラスの男と話していた。
「俺と八尋やります!」
挙句の果てに八尋の名前までもを勝手に使い大きく宣言した。
八尋は「自分はやらない」と手を挙げようとしたが、誰にも気づかれないうちに手を下ろす。
「いいの?」と顔を覗き込む柚希に頷いて見せ、手元の台本を開いた。やるとなったら恥をかかないようにきちんと読み込まないとだ。
「それじゃあ決まり。楽しみだな」
翔は八尋に笑いかけた。それが含みのある嫌味な笑みに見えてしまい、ぶんぶんと頭を振った。
それと同時に推薦者とジュリエット役の玲奈は嬉しそうに拍手をしており、柚希はそれを見て複雑そうな表情を浮かべている。
時間の流れはただ一方的に進んでいき、各々の真意が霧がかったまま話はまとまっていった。
八尋はただそれに身を任せるばかりで、途中から深く考えるのをやめていた。
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