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柚希の赤裸々な告白にひとつひとつ頷いた後、八尋は笑った。
「すっごいよく喋るね」
そう言われた柚希は顔を真っ赤にして俯いた。
「ごめん、悪い意味じゃなくて。ちとせのことそんな大切にしてる人がいたんだって思って」
いい意味で、と付け足すと柚希は調子を取り戻し、また口を開いた。
「新島くんの隠れファンは多いんだよ!本人が女の子苦手みたいだから近づく子は少ないんだけど、今年なんて同じクラスになれたことが奇跡って友達と話してたの」
「ちとせってそんな人気なんだ」
複雑に揺れる感情を隠し切る自信がなくなり顔を逸らし、真っ直ぐ続く狭い住宅路の先を見つめた。
「野沢くんも好きでしょ、新島くんのこと」
「は?」
声が裏返った。当然誰にもバレていないであろうと思っていた自分の気持ちが当たり前のように見透かされていたのだ。首筋に汗が垂れる。
「あれ、すごく仲良いよね?」
きょとんとした表情の柚希。
友達として、という意味だと理解し八尋はほっと胸を撫で下ろすと同時に顔に熱が集まっていくのを感じた。
「あぁ、うん。中学の時から仲良いよ」
平然を装い慌てて続けると、「そうなんだ〜」と柚希は頷いた。話が途切れ歩みを進めていると、不意に柚希の足がぴたりと止まる。
八尋は顔に集まる熱を冷まそうとワイシャツの首元をぱたぱたと動かし風を起こしながら、立ち止まった柚希を振り返る。
「どうしたの」
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