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「もしかして、新島くんのこと好きなの?なんか、その、そういう意味で好きだったり……する?」
恐る恐る、といった様子の柚希になんと誤魔化したら良いのかわからず八尋は道端で硬直してしまった。
女の子は鋭いんだな、なんて考えながら自分の人生が閉ざされていくような感覚に落ちていく。
気持ち悪がられ、噂が広まり、ちとせ本人の耳に入り二度と横を歩けなくなり、軽蔑され、学校にも通えなくなる。という自分の姿が、ありもしない自分の姿が、フル回転する頭の中に描き出される。
「偏見もないし誰かに話す気もないんだけど……でも、あの……あはは、勘違いだったら本当にごめんね」
八尋よりも慌てふためく柚希は「また私、変なこと言っちゃった」と静かに呟いた。
八尋は柚希の顔が曇っていくのを見て、諦めに似た感情が湧き上がるのを感じた。数日前に初めて話をした子だけれど、彼女が意地の悪い人間でないことくらい伝わっている。
もういいか、とかこの子なら、とかそういった思いがぐるぐると巡り、考えているうちに足元から身体の力が抜けていく。
八尋は脱力し、その場にしゃがみこんだ。
「内緒にしてくれる?」
熱くなる頬を手の甲で隠しながら、目線だけで柚希を見上げる。
柚希は顔を真っ赤にして何度も頷いた。
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