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お互いの秘密を打ち明けあった2人は、駅の近くの喫茶店に入ることにした。
「それでそれで……いつから好きなの?やっぱり中学生の頃?」
「うん」とか「まあ」とか歯切れ悪く肯定し、熱の冷めない体内にアイスココアを流し込む。甘ったるさが脳に伝わりくらりとした。
それに対し頼んだアイスティーを一口も飲んでいない柚希は八尋が何を言っても嬉しそうにキャッキャッと笑う。
柚希は男性同士が恋愛するドラマにハマって以来そういうコンテンツが好きだと語った。
八尋の恋心に対しても物語を消費するかのように「いつから」「どこが」「どうして」を聞こうとしている様子であった。
八尋は中学の時からちとせが好きであったが、その理由を考えたことはあまりなかった。一緒にいればいるほど好きだと思う事が増える。その理由を言語化しようとしたことがなかったのだ。
「柚希はなんでちとせのファンなの?去年とか違うクラスだったんだろ」
自分ばかり答えられない質問に頭を悩ませるのが癪で、柚希に問う。
「去年は新島くん文化祭の演劇出てたでしょ。そこで初めて知ったの」
翔と楽しそうに参加していた三銃士のことだ。
「私の推しにそっくりでさ……」
「推し?」
柚希はスマホを手早く操作しゲームの画面を八尋に見せた。画面には煌びやかな衣装を纏う可愛らしい顔の男キャラが少しキョトンとした表情でカメラ目線をしているのが映し出されている。
「へぇ、可愛い」
確かに雰囲気は似ているな、目元のほくろも同じ位置にある、と感心しながら八尋はもう一度アイスココアを飲んだ。
ストローを動かし氷がカラカラと音を立てるのを無意識に楽しむ。
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