よくあること

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┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 午後の授業はロングホームルームだった。10月末の文化祭のために、1ヶ月以上も前の今日から準備をするのだ。 「去年もこんな早くから準備したんだっけ」 前の席のちとせに聞く。 シュークリームを頬張っていたらしいちとせは椅子ごと振り返りもぐもぐと飲み込んでから口を開いた。 「去年演劇でたから、すげー覚えてるわ」 「あー、そっかそっか。今年はどうすんの」 各学年の各クラスから最低2名以上の代表者を募り行う合同演劇。 演劇部の演劇とはまるで違いクオリティは低いが、それに参加する者は暗黙の了解で顔の良い人気者ばかりだ。 何年か前にミスコンテストやミスターコンテストが廃止され、代わりにこの演劇が行われるようになったとどこかで聞いた。 「翔先輩は、多分今年も出るよね」 「あの先輩のあの性格なら出るだろーね」 顔の良い翔は2年連続でメインキャラクターを演じてきたらしい。 去年はちとせと共に現代版『三銃士』の一人を演じていた。 「どうせ、ロミオ役になるんだろうな……」 ちとせのもつプリントには『ロミオとジュリエット』という文字がでかでかと書かれていた。 購買での出来事を思い出す。翔を呼び止め何も言えなかったのは、もしかして演劇のことを聞こうとしていたのだろうか。 「なんにせよ、どの役も女と距離が近すぎるよな」 「まあ、メインキャラになるとね」 難しい顔をしたちとせがうーんと唸っていると、ホームルームの議題も演劇の話へと移った。
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