水割りは2cm

「なんだよ、これ」
　弘典(ひろのり)が言った。
「え？」
　剛士(たかし)が振り向くと、弘典はクローゼットの前からこちらを見ていた。
「ジャケットしまおうとしたらポケットに入ってたんだけど」

　弘典は剛士が脱いだままにしていたジャケットを左手に持っている。彼の右手にある紙切れを見て剛士はしまったと思った。
　あれは昨日行ったキャバクラでもらったキャバ嬢の名刺だ。もらったままポケットに入れてしまっていた。