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出会い
仕事をしている間、ずっと本屋のことが頭から離れなかった。どうも上の空だったみたいで同僚から何回か心配されてしまった。
やっと仕事が終わる頃には午後7時を少し過ぎたところだった。
昨日と同じように文庫本の新刊コーナーに行くと先客がいた。もう少し時間が経ってから戻って来ようと思って違うコーナーに足を進める。
昔読んだ本をもう一度読み返すといったことを何冊か繰り返しているうちに30分が経っていた。
新刊コーナーに再度行ってみたがまださっきと同じ男の人がいる。しかし今日こそは新刊を買うという強い気持ちを持ってここに来たので、私は仕方なくその人の隣に並んで本を選ぶことにした。
今話題の作家さんの本を手に取って読んでいたところだった。ここで残念なことに私の読書タイムは中断されてしまう。何と隣の人が私に声をかけてきたのだ。
「その作家さん、伏線がしっかり張られていて読み応えがありますよね。僕もその作家さんの他の著書を読んだのですけれど、すごく良かったです」
いきなり話しかけられて驚いたけれどそれを悟られないようにしなければ。
「そうなんですね。今話題になっているみたいですし、すごいですよね。買ってみようと思います」
「いつもこの書店に来られているのですか?僕は週2、3回はここに来ています」
「まだそんなに来たことがないです。本屋に来るのが好きなのでまた来ると思います」
「そうなのですね。また会えたら嬉しいです」
そんな会話を交わして私はそそくさと先程の本を持ってレジに向かった。
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