不審な気配

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不審な気配

 本当は行きたくなかったのだが、会社の近くには書店があまりないこともあって、春夏秋冬に行くことになった。  新刊コーナーに行って買おうと思っていた本を手に取ると、すぐにレジに向かった。どうやら坂畑さんはいなさそうだ。少し安心した。  駅までの道を歩いていると、後ろから視線を感じないこともない。ただ歩いている人が多かったのであまり気に留めなかった。  そして最寄駅からマンションに向かうところで、やはり後ろに人がいる気配を強く感じた。  夜で街灯も少ない所だから誰かいたとしても気づくことができないなと不安に思いながら歩いていた。  たまに後ろを振り返ったり、立ち止まったりしてみたが、特に証拠を得られることもなくマンションに到着した。  私が住んでいるマンションはオートロックなので中まで付いて来られることはないだろうと安易に考えていた。  そして、郵便受けに何か入っていないか確認してエレベーターに乗った。  今日は何も起きなかった。ただこの時の私がこれ以上警戒することなく、何も対策を取らなかったことを後の私は後悔することになる。
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