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「でも、どうして私なんか。もっと生き生きしている女性はたくさんいますよ。それこそ、起業家精神を持って、プロのモデルや俳優にアタックしたら?」
語尾がきつい声音になった。
「それじゃ面白くないでしょ」
急にフランクになる成田。
「そういう方は、プロとして自分をつくり見せているんです。それは立派な仕事です。でも、僕がモデルにしたいのはそういう人たちではない、ふつうの人です」
「でも、あなたがいうように、その、私き、きれいでは」
「きれいですよ。そんな、型通りのビジネススーツで映える方、いわば制服を超えるような生命力を見せる方はそういないんです」
成田は女性の観察家か、とミモザはさらに距離をとろうと考えたが、それでも彼の言う自分の姿を脳裡に浮かべずにはいられなかった。
「まあ、実際にはそういうビジネススーツよりは私服の方がいいですけどね。お気に入りを着てきてください。そのほうがあなたらしさが出るから」
「ちょ……ちょっと待って」
「話は早く進めるのが僕の主義で」
「まだOKとは言ってません」
「まだ?」
「揚げ足をとらないでください」
そういいながら、つい上目遣いに睨んだ自分がすでに成田に負けていることをミモザは理解していた。
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