プロローグ

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プロローグ

「ライネ、準備は良いか?」 「うん! いつでも良いよ、お兄ちゃん!」  ライネと呼ばれた雷纏う金髪の幼女が元気よく頷いた。  ヤル気満々の様子が見て取れる。  俺はそんな彼女を横目に、ハンドガンの劇鉄をスライド。  安全装置を外し、タイミングを計る。 「じゃあ、三で飛び出すぞ。 一……」 「二! びゅーん!」 「三! 行くぞ、ライネ!」 「うん!」  タイミングを合わせ、俺とライネは物陰から飛び出し、 「動くな! 動いたら撃つ!」 「撃っちゃうぞー! にしし!」 「…………」  銃口を向けて脅すも、暗がりで蠢く何者かは一向に止まる気配がない。  こちらの言葉を理解できていないのか、それとも……。 「ねえ、そうちゃーん。 返事ないからもう撃って良いー? きっともう手遅れだと思うよ?」 「いや、まだだ。 返事がないからって意識が変遷しているとは限らない。 まずは確認してからだ」 「むぅ……はーい」  不貞腐れるライネの前には決して出ず、銃口を前方に向けたまま、俺はもう一度声を掛ける。 「驚かしてすまない。 俺達はあやかし専門民間軍事会社ヴェクタ所属の魔術師、麻木宗十郎と異能使いの十村ライネだ。 あんたが通報のあったあやかしだな? 変遷しかけてると通報があったが、まだ無事ならゆっくりこちらへ歩いてきてくれ。 乱暴はしない、魔術で抑え込んでやるだけだ。 だから抵抗は……」 「……! そうちゃん、下がって。 来るよ」 「!」  ライネが呟いた次の瞬間、奥で蠢いていた謎の物体が姿を現した。  不気味な四肢に、頭部の皿。  あの特徴的な外見からして、どうやらホシはカッパらしい。  あやかしの中でもポピュラーな種だ。  ただし、瞳が赤く染まっていなければ、の話だが。  遅かったか。
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