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あやかし専門民間軍事会社ヴェクタの日常
あやかしは死後、炭素と化し、この世から一切の痕跡を消す。
しかし、何もかも消え去る訳じゃない。
たった一つ、あるものをこの世に残していく。
それがこの紫色の結晶。
骸晶だ。
「お疲れ様、宗十郎。 ライネもよく頑張ったわ。 ごほうひのケーキよ、味わって食べなさい」
「わーい! ショートケーキだー! ありがとー、沙夜お姉ちゃん! いっただっきまーす!」
ライネはケーキを受け取ると、ソファーに腰掛けケーキを食べ始めた。
あやかしを圧倒する程の力を有しているとはいえ、ライネはまだ九才。
ケーキを食べる姿は子供そのもの。
戦ってる時とは大違いだ。
「宗十郎」
「ん?」
振り向くと、見てくれは黒髪清純派女子高生の沙夜が俺を険しい目で見つめていた。
「その……救えなかったのはあんたのせいじゃないわ。 誰が行っても同じ結果になった筈よ。 だから、えっと……」
「……はぁ、なんでお前まで暗くなるんだよ。 あやかしを救ってやりたいってのは俺のワガママなんだ。 沙夜がそんな顔する必要なんざ無い。 だろ?」
「でも……! ……わかったわよ」
今一納得していない沙夜だったが、これ以上議論しても平行線にしかならないと悟ったのか。
「どっか行くのか?」
「あの女のとこ」
あの女?
ああ、あいつの事か。
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