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過去編 後悔2
「お兄さん、何してんの?」
知らない若者、1人ではなく3人に囲まれ逃げようがない
「なぁ、あんたnagiだろ?ホントにこの辺りに住んでるみたいだな」
「あの情報確かだったんだな。ってことは、見付けたらヤッてもいいってウワサもホンモンなんだろ?」
何を言ってるのか理解出来ない…
噂ってなんだろう…
誰が、何に…?
浮かんでは消える疑問も、今のオレには全てどうでも良かった
動画で使われてる名前も、家がバラされてることも、今から犯されることも…
もう、何もかも
何も、考えたくなかった
「いいよ。何も考えれなくなるくらい、忘れるくらい気持ち良くしてくれるなら」
泣きたいのに、涙は出なかった
ただ、泣き出しそうな笑みを浮かべ、出来るだけの虚勢を張った
使われていない工場に連れて行かれ、声が涸れるまで鳴かされる
途中で買っていたゴムは全て使い果たし、それだけでは足りなかったのか途中からはナカに出された
誰の精液かもわからないくらいいっぱい注がれて、掻き出したらまた注がれる
自分のペニスからとっくに何も出なくなって、それでも柔らかいまま勃ったモノを弄られる
SEXのコトしか、快楽のコトしか考えられないくらいに、ずっと犯され続けた
誰ががDomの真似事をして命令する
Normal のコマンドなんて、何も満たされないのに…
それでも、今のオレにとってはどうでも良かった
Subなのは動画を見たヤツにはバレてるんだろうし…
言われるまま、ただの命令をそれっぽく聞いてやった
偽りのPlayに、何も満たされない
虚しさだけが募る行為だった…
どれくらい経ったのか、時間の感覚がない…
満足したのか、3人はオレの身なりを綺麗にしてくれてから帰っていった…
そのままヤリ捨てられると思っていただけに、良いヤツらだとか思ってしまう
辺りは暗く、ポツポツと見える家々の暖かな灯りが物悲しさを募らせる
家族揃っての夕食なのか、子どもの嬉しそうな声が聴こえる
「オレも…幸せになりたい…」
ポツリと口から溢れた言葉に虚しさが広がる
隼人さんと話し合わないと…
もう、動画は撮らない
撮られたくない
会社は、もう辞めるしかないな…
もう、居られない
誰に知られているのか、どこまで見られたのかわからない…
でも、隼人さんとは……
別れたくない…
離れたくない…
オレの、パートナーは隼人さんだけだから…
とぼとぼとマンションまで戻って来ると、見覚えのある人影につい期待してしまう
「隼人さん!今日は、ホントにごめん!動画なんだけど…」
彼に駆け寄り、抱き着こうとした瞬間強烈なグレアを浴びせられ、その場にペタンと座り込んでしまう
「え…な、んで…」
「近寄んなクズ。昼間っから会社飛び出して、男でも引っ掛けに行ってたのか?
鞄とか置きっぱだったから、ワザワザ持って来てやったのに、サイテーだな」
今まで見たこともないような、冷え切った軽蔑する目
汚いモノを見る目
攻撃的なグレアを全身に浴びてしまい、呼吸もままならない…
「あ、昼間に聞いてたからわかってるだろうけど、結婚前提のSubの彼女が居るから、お前はもういらねぇーわ
お前とはただの遊びだったし、お前も俺みたいな優秀なDomに相手して貰えて感謝してるだろ
餞別として、動画の売上の一部もこん中に入れといてやったから、俺との関係は一切喋んなよ」
会社に置いて来てしまったはずの鞄を思い切り投げつけられ、座り込んでいるオレの身体に当たって中身が路上に散らばる
「は、やと…さ」
「 Shut up2度とその面見せんな」
絞り出すように名前を呼んだ瞬間、突き刺すようなグレアと命令に声が出せなくなり、震えの止まらない手を差し伸べる
ヤダ…行かないで…
置いてかないで…
振り返るとことなく、立ち去って行く彼に声を出して訴えたいのに、最後に言われた命令のせいで声にすることが出来なかった
ただ遠くに去って行く、愛していたはずの彼の後ろ姿を見つめることしか出来なかった
その後、どうやって部屋に戻ったのか記憶が曖昧だ
酷いSub Dropに堕ち、どうやって回復したのかもわからない
なんとか回復出来ても鬱になってしまって、何も気力が湧かない
外に出るのすら怖くなって、部屋に閉じ籠った
ただ、貯金を崩して、息を潜めて過ごした
部屋を出たのは、家賃滞納でマンションから追い出された時
行くアテも頼れる人も仕事も帰る場所すらない
本当に、何もかも失くなってしまった…
「nagi」と名前を知ってる人は一晩買ってくれる
一番嫌厭していた名前なのに…
それに縋って生きるしかなかった…
名前を知らなくても、身体を買ってくれる人はいた
誰にも相手にされない日は、公園や橋の下で小さくなって寝た
寝込みを襲われる日もあったが、買われた日とやってるコトは同じ
心だけが死んでいくのがわかった
だから、あの日もいつもと同じようにしていた
いつまで続くのかわからない地獄のような日々
死ぬ日をただ待ち望んでいた日々
無気力な日々を
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