163人が本棚に入れています
本棚に追加
後悔
全てを話し終わり、見付けた動画も全部見せた
1年以上も前のモノだったが、自分が知っているモノは殆ど消されることもなく閲覧数は未だに増え続けている
隼人さんに、未だに利益をもたらしていると思うと、自嘲的な笑いが込み上げてくる
ホント、オレって隼人さんにとってなんだったんだろ…
颯斗はオレの話しを静かにずっと聞いてくれて、動画も何も言わずに見てくれた
腹部にある青バラのタトゥーを服の上から撫で、これも、隼人さんに言われて入れたんだよな…っとしみじみと思い出す
「……デジタルタトゥーって上手い言い方だよな…
コレと一緒で、一度入れたらどうやっても彫る前の綺麗な状態には戻せない
ずっと、ずっと誰かのパソコンとかスマホにデータが残って、消すことも出来ない…」
溜息と一緒に深く息を吐き出し、抱きしめてくれていた颯斗の腕からゆっくりと抜け出す
やっぱり、知られる前に消えとけばよかった
知られたくなかった…
好きになる前に、逃げればよかった
好きになりたくなかった…
Domだってわかった瞬間、拒めば…よかった
「Subなんて、性奴隷かオモチャだって、言っただろ?
今まで、優しくしてくれてありがとな。最後に、人らしく扱って貰えて、嬉しかった…」
震えそうな声をどうにか誤魔化し、何でもないというように笑ってみせる
今までにもしてきたように、何もかもを諦めてきた笑みを浮かべる
「メガネ、ありがとうな。これだけ、持って行ってもいいか?前のやつ、処分しちまったから、ないと困るし…
オレみたいな奴、もう見たくないだろうからさっさと出て行くから…」
ずっと俯いて動画を見ていて、オレのことを一切見ない颯斗に寂しさが募る
微かに感じるグレアがオレのことを嫌悪しているように感じ、胸が締め付けられるように痛い
もう、顔も見たくないってコト、だよな…
そりゃ、そっか……
こんな誰かれ構わず抱かれまくってた奴、軽蔑しない方がおかしいもんな…
大丈夫、こんなの、慣れてる…
いつもの、ことだから…
ただ、颯斗には…嫌われたくなかった…
最後に颯斗の顔を見たいと思うものの、一向に顔を上げない様子に目を閉じて小さく息を吐き出す
静かに背を向けて出て行こうとした瞬間
「 Stay、晴臣さん。…… Come」
いきなりの命令に拒絶できず、足を止める
セーフワードを言えばいいだけなのに、あの言葉だけは今は言いたくない
「晴臣さん…お願い、 Come」
颯斗の寂しそうな声を拒むことが出来ず、おずおずと座っている彼の前に戻る
俯いたままなのに、逃げないようにギュッと手を握られているせいでどうすることも出来ない
早く離れなきゃって思うのに、まだ触れて貰えるのが嬉しいって思ってしまう
「 Good、ありがとう
言いたくなかったよね…。こんな酷いとは思ってなかった。もっと…、もう少しマシなんだと思ってた。
晴臣さんのことは、動画の件や退職についてはちゃんと調べていたはずなのに…
こんな、酷かったなんて…」
颯斗の口から思いもよらない言葉に目を見開いて驚く
調べていた…?
動画も、オレが仕事を辞めたのも、知ってた…?
いつから?どこから?なんで…?
オレと颯斗が会ったのは、あの公園が初めてのはずなのに…
それなのに、……なんで…?
浮かんでは消える疑問
信じたいって気持ちが、どんどんドス黒く塗り潰されていく
「ど、いう…ことだ…?知ってて、オレに声掛けて、囲ってたっていうのか…?」
頭がゴチャゴチャして考えがまとまらない
意味がわからない
颯斗は、オレが『nagi』としてあんな動画を撮られてるのを知ってた?
『凪 晴臣』として、働いてて、なんで辞めたかも知ってた?
知ってて、今まで知らないフリして…
コイツも、あの人と一緒なのか…?
やっぱり、Domなんてみんな一緒だった…
信じるヤツが悪い
期待するヤツが悪い
騙されるヤツが悪い
Subなんて、所詮はオモチャで性奴隷で…
Domに縋って、媚びなきゃ生きることすら出来ない…
信じてたのに…
信じたかったのに…
颯斗だけは…
颯斗は、他のDomとは違うって…
信じたかった…
最初のコメントを投稿しよう!