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誰かが泣いている気がする 膝を抱えて、少しでも小さくなるように蹲って 誰にもバレないように必死に唇を噛み締めて声を殺す 「………」 髪もボサボサになり、ちゃんと寝れていないせいで目の下の隈が酷い SubDropに陥り、酷い倦怠感と強烈なグレアを受けた恐怖、パートナーだと思っていた彼に捨てられた不安感と虚無感に苛まれ、死ぬ寸前まで堕ちていた時の自分自身 こんなボロボロになっても、まだ期待してたんだよな… 隼人(はやと)さんが迎えに来てくれるって… 隼人(はやと)さんが抱き締めてくれるって… だから、あの部屋にしがみついていた 貯金が底を尽きて、ゴミ溜めになった部屋で いつも、外の音に怯えながら いつ扉を開けて、知らない人が入って来るのではないか?って 隼人(はやと)さんが来てくれるんじゃないか?って… 「ホント、馬鹿なヤツだよな…」 蹲る自分を見て、今にも泣き出しそうな笑みを浮かべる 「あんなヤツ、さっさと忘れれば良かったんだ 変な期待をして、愛されてるなんて勘違いをして… あんなクズから、さっさと逃げれば良かったんだ」 自分に言い聞かせるように言葉にすると、蹲っている自分がゆっくり顔を上げ、暗い目で睨み付けてくる 「新しい拠り所は信頼出来るのかよ… こんな汚れきった、誰にでも脚を開くクズを本当に愛してくれるわけないだろ どうせ、また捨てられて、同じ思いをするだけだろ」 吐き捨てるように言われた言葉に小さく頷いてしまう 遠くで誰かがオレの名前を呼んでいるような気がする 「そうかもな…でも、颯斗(ハヤト)のことは信じたい また捨てられるかもしれないけど、その時は殺してくれるだろうし… 何より、あいつの傍に居たい。もう、離れたくないって、わかったから」 目を伏せて、静かに自分に言い聞かせる 「颯斗(ハヤト)のこと、愛してるんだ…」 本心を口にすると、今まで(わだかま)っていたものが溶け出したように感じる ゆっくり目を開けると、いつの間にかアイツも居なくなっていて、代わりに優しく微笑みながらオレを見つめる颯斗(ハヤト)の顔が見える 「おはよう、晴臣さん。俺も、晴臣さんのこと愛してます。 身体、痛いところとかない?」 心配気にオレの頬を撫でながら話し掛けてくれると、つい、その手に擦り寄ってしまう 「ん…へ、き…」 思っていた以上に掠れた声しか出なくて、つい笑ってしまう 不意に、首元に違和感を覚え、確認するように手をやると、硬い金属と革の触感があり 「颯斗(ハヤト)?コレ…」 首に巻かれたカラーらしき触感に全身が粟立つ 「晴臣さん、俺だけのパートナーになって下さい。 貴方のことは、これから絶対に俺が守るから。コレを取りに行ってて、1人にさせちゃったせいで…本当に、ごめんなさい」 少しだけ眉を顰めて謝ってくる颯斗(ハヤト)に愛しさが募る 一生縁のないものだと思っていた 「勝手に着けちゃったから、外した方がいい?」 少し不安気に聞いてくる颯斗(ハヤト)に、首を横に振って答える 「このままでいい。颯斗(ハヤト)が着けてくれたのなら、このままがいい」 愛し気にカラーを撫で、颯斗(ハヤト)にキスを強請る 何度も触れるだけのキスをし、抱き締め合うだけの他愛無い時間を過ごす 「晴臣さん、愛してます。 本当は、パートナーになって欲しいって告白する前に話さなきゃいけないのに、順番が逆になってしまってごめんなさい。 ……俺の話、聞いてくれますか? 俺が晴臣さんを知った時のこと、貴方を囲った理由、それと…これからのことを…」 颯斗(ハヤト)のちょっと申し訳なさそうな声に、オレはただ頷いた 大丈夫。何を言われようと、どんな話だろうと 今は、今なら、颯斗(ハヤト)のこと信じられるから…
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