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さすった民の背中、心なしか小さくなっている気がしたけれど、社会人になって慣習の筋トレをやめてしまったせいだろう。
次の瞬間民は呼吸が整うと、彼は真っ直ぐ背を伸ばし、私に向き直った。
「ごめんな」
「別にいいよ」
私は笑ってしまう。
彼が顔の前で小さく手を合わせて謝るものだから、ちょっと可愛らしくて。
私たちは高校からのつき合いだ。
大学も学部は違うけど一緒。
社会人になって、流石に職場は別になってしまったけれど、ふたりの関係は続いていた。
お互い24歳。
仕事もそれなりに楽しくて、結婚とまではまだ行かないこの恋人関係もそれなりに楽しい。
仕事の休みが中々合わないけれど、その分、久しぶりに会う民とは新鮮な気持ちでいられる。
今までもずっと好きだったし、これから先も私は民のことを好きでいるだろう。
「行こうか」
「うん」
彼は私の手を取り、繋ぎ、そして彼のコートのポッケに入れた。
冬の恒例行事。
民の癖は、学生の頃から何も変わっていない。
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