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「実はこの子の母親の出身地がここだと聞いているんですよ」
男の言葉に女主人は少し驚いた。
「へぇ……なるほど、そういうことかい」
そして、ジッと彼女は男の瞳を見た。
「わかったよ。中々骨のありそうなやつじゃないか。話くらい、向こうにしてやってもいいよ」
「ありがとうございます」
「元は軍人だったのかい?」
「ええ。でも、争いの時代は終わったと思ってます。だからこそ、これからの時代を築いて行きたい。そう思ってます」
彼がそう言ったとき、ちょうど彼らのところに一台の車がクラクションを鳴らしながらゆっくりと横につけてきた。
車は止まり、中からサングラスを掛けた女性が顔を覗かせた。
「向こうの方に事務所があるみたいよ?」
「あぁ、燐火ありがとう」
二人のやりとりに、女主人は思わず声を出した。
「その子のお母さんかい?」
「いえ、でも最高のパートナーです」
彼の言葉に、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
そして、彼もまた……かつて平山哲郎と呼ばれていた男も柔らかい笑みを浮かばせながら、車いすに座る愛娘の頭を優しく撫でた。
空は青から赤へと変わった。
そして、世界の色もまた変わっていくだろう。
でも変わらないのは、やわらかな人のぬくもりだ
……END
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