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かつては……とても綺麗だったのだろう。
それでも時代が進むにつれ、多くの外国人を受け入れるようになったが故にモラルの破壊が起きた。他国がうらやむほどに衛生的だった空間と景観、情緒は破壊された。
近代的で、なによりも道行く人が颯爽としていた時代は終わりを告げた。時代の先端を行っていた技術力、そして地位は失墜し、今ではアジアのただの一国と成り下がっている。
首都に張り巡らされた地下鉄網は過去の遺産。高度なインフラも時代の流れと共に劣化し、直されることはない。
地下鉄通路の端には幾人もの浮浪者が寝ている。
中にはハエがたかっている者もいた。おそらくは死んでいるのだろう。
汗と糞尿……そして獣の体臭が時より鼻孔を刺激して顔をしかめさせる。
プラットホームへ滑り込んできた毒々しいスプレーアートに彩られた列車が姿を現せた。
ホームにただ独りたたずんでいたコートの男はゆっくりと、ガタガタと軋みを上げる扉を潜った。
中に入ると、ホームと同じようにゴミが散乱し、奥の優先席には浮浪者が我が物顔で寝ていた。
すでに秩序の匂いはそこには存在しない。
ただ、そうやってきたから……
今までがそうだったから……
同じ事をずっと繰り返したからというだけの、慣習にまみれた怠惰で唾棄すべき世界……
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