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おじさんは寒さとは反対の意味でじっとしていられないのか、ずっと足踏みをしている。足元がどんどん踏み固められ、謎の魔法陣が出来上がった。
「底なしって……」
「あんだろ、トッピング」
「トッピングって、ゆで卵とか?」
おじさんが笑って、「これよ」と示したボタンを見る。
「激辛パウダー?」
「そうよ。それを追加すると地獄谷になるのさ」
「ん? この河童沼ってなんです?」
おじさんは一瞬動きを止め、何事も無かったかの様にシューシュー言い始めた。
「あったかいうちに帰らんとな!」
おじさんは明らかに動揺している。
「いや、河童沼って? もちろん知ってるんですよね?」
おじさんは意味深に笑い、
「尻子玉……抜かれんなよ」
と言い残し、シュポシュポ言いながら走り去って行った。
「ん?」
おじさんが去ったあと、ふわりと温泉の匂いがした。
「Siriこだま? なんだそれ。変なおっさんだったな」
ちょっと迷って野菜カレーの五辛を押す。やっぱり河童沼はビギナーには手が出せない。ゴシャリとちょっと嫌な音を出してカレードリンクが転がり出て来た。
「うう、寒い」
寒さでかじかむ手で蓋を開けると香辛料が火の粉になって飛んで行った。
「えっ、まじで燃えてんの?」
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