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会社帰り、目当てのカフェで満席だと言われ、どんよりとした気持ちで家まで十五分の道のりをとぼとぼと歩いて行く。重い雪が頭や肩に降り積もる中、視線の先に雪男の様な姿で佇む自動販売機があった。先日のドカ雪で、すっぽりと雪に埋もれてしまったらしい。
「……コーンポタージュでも飲むか」
あまりの寒さと空腹で、どうしても温かいものを身体に入れたかった。
「お汁粉、蟹汁、ラーメンのスープ……。ええい、『あったか〜い』ならこのさい何でもいい!」
ズボ、ズボ、と雪を踏みしめながら自動販売機に近付く。
「除雪、間に合ってないな……」
スマートフォンを震える手で握りしめながら、雪男化している自動販売機を見上げると全ての飲み物がカレードリンクだった。
「あ?」
噂では知っていたがこんな身近に存在していたとは思わなかった。
「すげー、種類ありまくるな」
牛肉、豚肉、鶏肉、野菜カレー、豆カレーがそれぞれ、一辛から五辛まで揃っている。五辛を選べばこんな寒さはふっとんでしまうだろう。風がびゅうと吹いて雪を巻き上げた。
「寒っ、死ぬわこんなの」
足踏みしながら、どのカレーにするか考える。早く決めないと自分も雪に埋もれてしまう気がした。
「無難なところから攻めるべきか」
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