5ー3 ヒーロー

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 そのまま歩き続けた私たち。  やがて私たちの住むタワーマンションが見えてくる。  家についたら、この手を解かなきゃいけない。  でも、もう少しだけ、繋いでいたいな。  そんな私の想いを察したのか、突然「ぐ〜」っと腹の虫が鳴き出した。  少しだけ前を歩いていた一騎さんが、その音に振り返る。  え、そんなに音大きかった!?  急に頬が熱くなって、慌ててうつむくも時既に遅し。  彼の視線は、私のお腹に注がれていた。 「なんか、スミマセン、私……」 「飯でも食ってくか?」 「え?」  彼の視線は、私たちの歩いていた道の横に注がれていた。  そこにあるのは、高級ハンバーガーショップ。 「いいんですか?」 「ああ、たまには、な」  ◇◇◇  私は注文したマッシュルームパティハンバーガーは、お皿に乗って提供された。  その隣には、ポテトが添えてある。  本当は、ここは手で持ってがぶりとかじりつきたいところだけれど。  私は戸惑いながらも、フォークとナイフを手にとる。  すると―― 「手で食べればいいだろ」  え? と彼を見た。  目の前で、一騎さんが机に頬杖をついてこちらを見ていた。 「でも……」 「好きなように食べればいい。俺しか見ていない」  ため息混じりにそう言った一騎さんを見て、なぜだか嬉しくなる。  だから、その大きなハンバーガーを両手で挟んで口もとへ運んだ。  大きな口を開けて頬張れば、その美味しさに頬が落ちそうになる。 「うまいか?」 「はい、とっても」  もぐもぐと口を動かしながら答える。  1つ3000円のハンバーガーって、こんな味がするんだ。  それは、今まで食べたどのバーガーよりも、絶品で。  美味しさに思わず止まらなくなり、どんどんと食べ進めていった。  やがて最後のひとくちを口に放ると、とても幸せな気持ちに満たされた。  やっぱり、美味しいものって最高!  そう思っていると―― 「ふっ」  と、不意に笑う声がして、慌てて目の前の彼を見た。 「俺は、人と食事をするのが苦手なのだが」  ビクンと身体が跳ねた。 「いい。どうせ後藤が言ったんだろ」  私の言わんとしたことを言われ、ほう、と息を吐き出した。 「だが、お前が食べている姿を見るのは、好きかもしれない」  そう言った一騎さんの口角が、いつもより少し上がっているような気がして――。  どうしよう。  私、今、幸せだ。  どうしようもなく。  一騎さんが、好きだ。  そう、思ってしまった。  明日のパーティーが終わったら、この契約は終わってしまうというのに。
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