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<隅中 巳の刻> 幕間
骸となった八爪の足を両脇に抱えた闇耳が
おぼつかない足取りで廊下を歩いていた。
鴬張りのキュッキュッと鳴る音に重なって
八爪の白装束がズルズルと微かな音を立てていた。
鳶が「ピーヒョロロ」と啼いていた。
奥の間の障子戸の前で闇耳は一度足を止めた。
そしてキョロキョロと首を振ってから
こくりと頷いた。
闇耳がゆっくりと障子戸を開けると
座敷牢の入口が
ぽっかりと口を開けているのが見えた。
穴の前で闇耳は大きく息を吸い込んだ。
そして
闇耳はその暗闇へと足を踏み入れた。
座敷牢の状況は先ほどとまったく同じだった。
闇耳は開いた格子戸から八爪の骸を投げ入れると、
しばらくの間、
その場に佇んでいた。
臭気が闇耳の体に絡みついた。
それは長い年月をかけてこの場に溜まった
八苦の怨念のようだった。
どこからともなく生温い風が吹いて
闇耳のおかっぱ頭がふわりと揺れた。
「姉、ちゃ、ん・・」
その時、闇耳が振り返ってポツリと呟いた。
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