15人が本棚に入れています
本棚に追加
<日入 酉の刻> 逢魔
西の空が紅く染まり、
夜霧の敷地にも薄っすらと赤みが射していた。
本宅の艮の間の縁側に
消炭色の着物を着たおかっぱ頭の少年が一人、
ポツンと座っていた。
柳眉の下の二重の瞳は右目が緑に、
左目は赤く光っていた。
ツンと尖った細い鼻と
その下には鶴の頭のように赤い唇があった。
その色白の美少年こそが
闇耳だった。
庭先で雉鳩が「グーグーポッポー」と啼いた。
闇耳の太腿の上には真蛇の面があった。
闇耳は手探りで
左手の側に置かれた龍笛を手に取った。
そして目を閉じてそっと唇に笛を当てた。
美しくも悲しげな笛の音が妖しく響いた。
最初のコメントを投稿しよう!