<日入 酉の刻> 逢魔

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<日入 酉の刻> 逢魔

西の空が紅く染まり、 夜霧の敷地にも薄っすらと赤みが射していた。 本宅の艮の間の縁側に 消炭色の着物を着たおかっぱ頭の少年が一人、 ポツンと座っていた。 柳眉の下の二重の瞳は右目が緑に、 左目は赤く光っていた。 ツンと尖った細い鼻と その下には鶴の頭のように赤い唇があった。 その色白の美少年こそが 闇耳だった。 庭先で雉鳩が「グーグーポッポー」と啼いた。 闇耳の太腿の上には真蛇の面があった。 闇耳は手探りで 左手の側に置かれた龍笛を手に取った。 そして目を閉じてそっと唇に笛を当てた。 美しくも悲しげな笛の音が妖しく響いた。
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