ポケットの中のお菓子は幸せの香りがする (ポケットの中)

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 その夜、朝音(アオ)はベッドの上でおっぱいキャンディーを眺めた。  キャンディー以前にポケットへ入れられていたお菓子も並べてみる。  朝音(アオ)は独り言を言う。  「このお菓子のラインナップがさぁ」 朝音(アオ)はお菓子を入れた者の正体が分かっていた。 (お菓子なんかこっそり入れて、どういうつもりなんだろう? まさかな。そんなはずないよな。女ぽさ少ないけど、気さくで、何気モテるし。結構人気あるし)  朝音(アオ)はお菓子をひとしきり眺めて、それからベッドの横の小さなテーブルに置いた。  そしてまた考える。  (しかも、かまかけられた。からかわれているんだろうか?) 朝音(アオ)は思う。 (俺の事なんて幼友達にしか思ってないはず) そして悲しい気持ちになる。  次の日、教室に入ると、しょうもない出来事が起こっていた。  黒板にデカデカと書かれていたのだ。  ――おっぱいキャンディ。俺にもください――  ――中居くんだけにあげて、ズルいです!――  そして大きなおっぱいをぶら下げた牛の絵が描いてあった。  朝音(アオ)は登校していたクラスメートの顔をみる。  既に大半のクラスメートが登校していた。  クラスメートの視線が、教室の入り口に立った朝音(アオ)に集中した。  朝音(アオ)は光井を探す。光井は自分の席に座って、朝音(アオ)を見ていた。光井と朝音(アオ)は目が合う。光井の顔がクシャッとなった。  そして両手を合わせて、口が動く。  たぶんゴメンって言ったんだと、朝音(アオ)は思った。  朝音(アオ)は慌てて黒板に向かった。  そして黒板の前まで行くと、黒板消しを手に持って、必死で消し始めた。  すると、桂ちゃんもやってきて、一緒に黒板の文字や絵を消してくれた。  朝音(アオ)が小さく言う。  「ありがとう」  桂ちゃんが黒板消しを動かしながら言う。  「災難だね」    そこに光井も、後の黒板に置いてあった黒板消しを持参して、文字や絵を拭き始めた。  「悪い。つい男子にお菓子の話しちゃって。そしたら、健吾が面白がってさぁ。止められなかった」 朝音(アオ)は言った。  「もう、良いよ」 でもその実思う。  ――あまり良くはない――    
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加