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その日の放課後だった。
朝音がコートを着ると、またポケットに何か入っていた。
朝音は、今回は用心して、学校を出てから取り出した。
今度は手紙だった。
”ごめんね。私のせいで、今日あんな事になるなんて、思ってもいなかった。中居が好きだったんだ。ごめんね。もうお菓子をポケットに入れたりしないよ。中居のことは諦める事にした”
朝音は手紙を見つめ、つい言葉が出る。
「マジかよ」
手紙に書かれた事は、本当なのかと考えた。
そして朝音は、希望的観測から導いた結論にたどり着く。
――きっとまた、お菓子か手紙がポケットに入るだろう。それまで待とう――
しかし違った。
手紙に書かれた通りだった。
2日経っても、5日経っても、1週間経っても、朝音のポケットに空っぽだった。
お菓子も、飴も、手紙もポケットに入ることはなくなった。
でも朝音は期待してしまう。
今日は何かが入っているんじゃなかと、期待してポケットに手を入れてしまう。
――でも、何も入っていない――
そしてとうとう3週間が経ってしまった。
朝音はうらめしげにポケットを叩く。
そして独り言を言った。
「全く、俺は何やっているんだよぉ! もうあれから3週間も経ってんだぞ!」
朝音は、教室にぶら下がっている、クラスメートのコートをみる。
「そっちだけ納得して、俺のこの気持ちはどうしたら良いんだよぉ!」
朝音は混乱していた。
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