ポケットの中のお菓子は幸せの香りがする (ポケットの中)

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 朝音(アオ)が、混乱してから3日が経った。  桂ちゃんが部活を終えて、着替えをした。  桂ちゃんの友達のミィちゃんが声を掛けてきた。  「帰ろう」  桂ちゃんが頷く。  「うん、帰ろう。でも、お腹すいたなぁ」  「そうだね。早く帰ろう。コンビニでチキンでも買う?」  「ごめん。私、金欠だわ」  「え? 半分あげるよ」  「悪いから良いよぉ」  桂ちゃんとミィちゃんが、いちゃいちゃしながら体育館を出る。  すると体育館の出入り口に朝音(アオ)が立っていた。  桂ちゃんが朝音(アオ)に気がついて訊ねた。  「体育館に用でもあるの? 忘れ物でもしたの?」  「忘れ物って言うんじゃないけど……」  朝音(アオ)が桂ちゃんとミィちゃんを交互に見た。  ミィちゃんが朝音(アオ)の顔つきを見て言う。  「あの。私、用事があったみたいで。先急ぐから。あのぉ」  「え? ミィちゃん。急に何で、一緒に帰ろうよ」  「え? そのぉ」  ミィちゃんが朝音(アオ)の顔を見た。  「悪い、一ノ瀬さん」  ミィちゃんがウンというと、足早に去って行く。  桂ちゃんが、ミィちゃんを見つめながら、ゆっくり歩き出す。  その隣を朝音(アオ)が歩く。    朝音(アオ)が自分のポケットからミルクキャンディを取り出した。包み紙をむいて、口に放り込む。桂ちゃんがその様子を見て聞いた。  「美味しい?」  「うーん。おっぱいの味がする」  桂ちゃんが赤くなる。  「中居まで、何言ってんのよぉ」  「桂ちゃんは、いつから俺の事、中居って呼ぶようになったんだっけ?」  「え?」  「昔は朝音(アオ)ちゃんって呼んでなかった?」  「まぁ、それはそう。でももう小学生じゃないんだよ。名前でなんか呼べないよ。彼氏でもないんだし」    朝音(アオ)がドギマギしながら言う。  「だったら名前で、呼んでいいよ」  「え? なんで?」  朝音(アオ)は少し苛立っていた。  「桂ちゃんは、自分のコートのポケットの中を見てないだろう?」  「ポケット?」    桂ちゃんが立ち止まりポケットを探る。  朝音(アオ)も歩くのを止めた。  「あっ、何か入っている」  ポケットから封筒を取り出した。  封筒だった。  「あ……、これ……、手紙?」  桂ちゃんが封筒から手紙出して、声を出して読んだ。  「お菓子入れたの、桂ちゃんでしょう? って……」 「3日前に入れたのに、全然何も言ってこないから。痺れを切らして俺からきた」  桂ちゃんが朝音(アオ)の顔を見た。  「バレてたかぁ。お菓子や手紙をポケットに入れたのが、どうして私だって分かったの?」  「桂ちゃんの事は、子供の頃から知っているんだぞ。桂ちゃんの好きなお菓子くらい分るよ。ポケットに入っていたのは全部……」  朝音(アオ)が說明していると、グーと桂ちゃんのお腹が鳴った。  桂ちゃんはとっても恥ずかしそうだった。  「ごめん。部活で、お腹空いて……」  朝音(アオ)が笑って言う。  「おっぱいキャンディー食べるか?」  「もう、やめてぇ。恥ずかしくって、穴があったら入りたいよ」  そしてまた桂ちゃんのお腹の音、グーと鳴った。  
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