深雪(みゆき)

9/26
前へ
/31ページ
次へ
それから数年が経ち、倫太郎さんは医者になる為の学校へ、紳太郎さんは高等学校へ、通われるようになりました。 それでも紳太郎さんは、成長しても相変わらずで、学校から帰って来れば、「深雪、深雪!今、帰ったよ。」と、真っ先に私の元へ、駆けつけて下さいました。 そして、この頃からでしょうか。 5歳も年下の紳太郎さんに、心がときめくようになったのは。 紳太郎さんが、私に何か用があって、「深雪?」と名前を呼ばれると、心が弾みましたし。 仕事をしている時も、遠目に紳太郎さんを見つけては、飽きることなく見つめていました。 朝、学校へ送り出す時も、本当に寂しくて、仕方がなかったものです。 紳太郎さんはと言うと、もちろん私が、世話係りだから気を使って下さるだけで、私の事は、何とも思ってらっしゃらなかった。 それでも、私の事を見つけると、笑顔で手を振って下さるお優しい方でした。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加