3人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな様子も他の使用人から見れば、珍しい事のようで。
「紳太郎様に、手を振ってもらえるなんて、うらやましい。」
と言われていました。
心から嬉しく思いましたね。
そんな時は、自分でも驚くくらいに、優越感に浸っていました。
人を想う気持ちというのは、本当に不思議なもので、日増しに募っていく時もあれば、このまま穏やかに、ただ想うだけでいいのだという時もあります。
私はとにかく、紳太郎様の側にあって、紳太郎様のお世話ができることが、本当に幸せでならなかった。
その一方で、倫太郎様のお世話係りであったのにも関わらず、紳太郎様ばかりに目を向けてしまっていた。
そのつけが、とうとう、回ってきてしまった日があったんです。
それは、倫太郎様が医学の学校を、卒業なさる時。
入れ違いで紳太郎様も、同じ医学の学校へ、入学が決まった頃でした。
そうなんです。
倫太郎様は、私が他所見をしている間に、すっかり大人になっておいでだったんですね。
最初のコメントを投稿しよう!