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季節は寒い時期で、私は火鉢に炭を熾(オコ)そうと、倫太郎様のお部屋に向かっていました。
倫太郎様はご長男でしたので、人一倍、医者として期待されておいででしたから、学校を卒業された途端に、実家の病院で働くように言われていたんです。
倫太郎様もそれに応える為に、一生けん命だったんでしょうね。
すぐにでも、お家の病院を見学したいと仰っていたんです。
それがその日だと聞いていたので、部屋には誰もいらっしゃらないと思っていました。
それが戸を開けると、倫太郎さんのお姿があって、私は少し驚きました。
「あら、倫太郎様?病院の見学は、どうなさったんですか?」
「ああ……また別な日にした。」
今、思えばその時の倫太郎様は、少し様子が変でした。
「でしたら、すぐにでも、火を熾しますね。」
私は、部屋の中央に置いてある、火鉢に炭を入れて、火を熾し始めました。
おかしい事に倫太郎様は、じっと私を、ご覧になっていらっしゃった。
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