深雪(みゆき)

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火もついて私は次に、紳太郎様のお部屋に、向かおうと思っていたんです。 そこへふいに倫太郎様の手が伸びてきて、私を引き止めたんです。 「倫太郎様?」 私が首を傾げると、次の瞬間、私は倫太郎様に、抱き寄せられていました。 「あ、あの…」 「深雪……」 私が離れようとすればするほど、抱き寄せる力は強くなっていく。 急に恐ろしくなりました。 倫太郎様が、倫太郎様ではないような気がして。 「そんなに、怖がらないで下さい。」 でも聞こえてきたのは、初めてと言うくらい柔らかい声。 「この時を待っていたんです。ずっと……」 耳元にそっと伝わる甘い声。 「あなたを守れるくらい大人になったら、言おうと思っていたんです。深雪さん、僕はあなたを……」 私は思い切って、倫太郎様から離れました。 これ以上は聞いてはいけないと、そう思いました。 「そんな、深雪さんだなんて……使用人をからかわないで下さい。」
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