3人が本棚に入れています
本棚に追加
冗談であって欲しい。
それは無意味な願いでした。
私の言葉が、返って倫太郎様のお心に、火を着けてしまったんだと思います。
「ど、どうしたら……僕の気持ちが本気だと分かってもらえるんですか?」
「倫太郎様…」
「こんなにも……あなたの事で、頭がいっぱいだと言うのに…」
倫太郎様の腕が再び私を包むと、その場に押し倒されて……
そこで大きな声を出せばよかった。
でも、倫太郎様のどうにもならない気持ちを、吐き出したいのも分かるんです。
自分もそうでしたから。
そのまま私は、倫太郎様に身を任せて、その熱い吐息に受け止める事にしたんです。
「すみません。突然、こんな事になってしまって……」
着物を直す私を、後ろから抱きしめて、倫太郎様はそう仰いました。
「まるで、夢を見ているみたいだ。あなたと、今こうしていうことが……」
倫太郎様は、私をご自分の胸に抱き寄せ、ずっと私を撫でで下さいました。
最初のコメントを投稿しよう!